4.時効の中断

治療に長期間を要する等といった場合には、時効を中断しておく必要があります。時効の中断とは、時効期間の進行をリセットする手続のことで、その方法には、①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③保険会社の承認という3つが挙げられます。
保険金請求における時効の中断で特に注意すべきは、上記措置を加害者に行うだけでは不十分であるという点です。例えば、加害者に対して損害賠償訴訟を提起しても、保険金の支払義務を負う保険会社にアプローチをしなければ、自賠責保険の直接請求権の時効は中断されません。
また、見落とされがちなケースとして、以下のようなものがあります。  交通事故の被害に遭ったAさんは、加害者が自己の過失を否定したため裁判でこれを争いました。結果としてAさんは、加害者に7割の過失を認める判決を勝ち取り、残りの3割分の損害を自己の人身傷害補償保険でまかなおうとしました。ところが、Aさんが手続きを取ろうとしたら、自身が加入していた人身傷害補償保険は既に時効で消滅していたのです。確かに、一般的な感覚からすれば、事故について裁判まで起こしたのに時効だなんて違和感があるようにも思えます。しかし、人身傷害補償保険は、加害者に対する損害賠償請求権とは全く無関係のものであり、法律上、加害者との関係とは別途に時効を中断する必要があるのです。
このように、時効は非常に複雑な問題であり、経験を積んだ専門家でなければ正確な事件処理は困難といえます。万が一事故に遭われた場合には、勝手な判断をせず、一刻も早く弁護士に相談されるのが賢明です。

 
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