3.むちうち症の検査方法

頸椎の正常な可動域は,首を前に倒す場合(屈曲)60°,後ろに倒す場合(伸展)50°,横に傾ける場合(側屈)50°,顔を横に向ける場合(回旋)70°とされていますが,交通事故により頸椎捻挫などが生じると可動域が制限されたり,首を曲げるときに痛みが生じることもあります。

 

頸椎捻挫など筋肉や骨格における機能障害の症状や部位を特定するために様々なテストが行われます。

基本的には道具や機械は使わず,手技や指示のみのよって患者の関節を三次元に動かして行い,大掛かりな機械や設備を必要としません。

交通事故における損害賠償請求との関係では,機能障害の症状,部位の特定という治療における役割の他に,頸椎捻挫などにより痛みや四肢のしびれが治癒されなかった場合に,残ってしまった神経症状があることの医学的な証明となるという役割があります。

後遺障害認定において,14級の認定を受けるためには相当の神経症状があることが医学的に推定されることが必要とされ,12級でも相当の神経症状があることが医学的に証明されなければいけないため,後遺障害診断書に下記の検査結果を記載することで残存してしまった後遺症の医学的な証明をすることができ,症状にふさわしい後遺障害認定をうけることができる可能性が高まります。

 

(1)スパーリングテスト(Spuling’s Test)

座った状態で行います。首を左右どちらかに傾けてそのまま後に傾け,医師が上から押さえつけて検査します。左右両方検査します。

頭を傾けて上から押さえつけると,神経根が圧迫されるため,神経根に障害がある場合には,障害がある神経根に対応する部位に痛みや痺れが生じます。

患者が痛みや痺れを感じる場合は+,感じない場合は-で結果が記載されます。

(2)椎間孔圧迫テスト

座った状態で行います。患者の頭を押しながら正面や左右に頭を傾けて行います。

頭を押しながら正面や左右に頭を傾けることによって神経根の通り道である椎間孔を狭めるので,患者が痛みを感じる場合には,神経根が圧迫されていることを意味します。

(3)ジャクソンテスト(Jackson Compression Test)

座った状態で行います。患者の頭に医師が上から下へ両手で垂直に圧迫をかけて行います。

スパーリングテストと同様に神経根が圧迫されるため,神経根に障害がある場合には,障害がある神経根に対応する部位に痛みや痺れが生じます。

(4)肩引き下げテスト

座った状態で行います。医師が片方の手で患者の肩を押し下げ,もう片方の手を患者の頭に置いて頭を横に傾けさせて,肩を押し下げた方の上肢に痺れや痛みが生じれば,血管束や神経に圧迫があることを示唆します。

また,筋肉や筋膜が拘縮したり,硬膜が癒着した場合にも,陽性となることがあります。

(5)伸延テスト

座った状態で行います。医師が両手で患者の頭を軽く持ち上げて,首にかかる重量を除いて検査します。

痛みが出る場合は筋肉または筋膜の拘縮による伸張痛であると考えられ,痛みがなくなる場合は椎間孔の圧迫や小関節包炎の存在が考えられます。

(6)ジョージテスト(George’s Test)

医師が患者の左右の血圧を測り,左右の手首の動脈(橈骨動脈)の触知をして検査します。左右の最高血圧(収縮期血圧)に10mmHg以上の差がある場合には,鎖骨下動脈の狭窄や閉塞が起きていると考えられます。

(7)バレ・リーウー徴候(Bsrr’ e-Leiou Sign)

患者が顔を左右に向けたり,頭を動かしたときに,目が回る,ふらふらする,吐き気,目がかすむなどの症状が出ないかをみる検査です。

上記のような症状が出る場合には,椎骨動脈症候群の存在が示唆されます。

 
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