2.頭部外傷に伴う脳神経の損傷
頭部外傷の場合、頭蓋底に集中している12対の脳神経に障害が生じることがあります。下に行くにつれて頻度は低くなっていきます。
- 嗅神経損傷
嗅覚を司る神経に生じる損傷です。嗅神経は小さな孔を通って脳に至っているため、外部からの力で脳底と頭蓋骨にずれが生じると嗅神経が切れてしまいやすく、脳神経の中で一番損害を受けやすい神経です。 - 顔面神経損傷
表情筋の動きを司る神経に生じる損傷です。 - 視神経損傷
視覚を司る神経に生じる損傷。バイク事故で側頭部を売った人に多い損傷です。視神経が通る骨の孔である視束管を撮影して骨折の有無を調べることによって診断することができます。 - 外転神経損傷
眼球を外側に見るように動かす外側直筋の動きを司る外転神経の損傷です。外転神経は脳幹から眼窩までの長い神経。外転神経が損傷を受けると目を外に向けたときの動きが悪くなったり、物がだぶって見えるようになったりする(複視といます)症状が現れます。損傷を判断するにあたっては、複像検査が必要です。 - 滑車神経損傷
眼球を外側や上向きに動かす上斜筋の動きを司る滑車神経の損傷です。滑車神経が損傷されると複視の症状が出ます。 - 動眼神経損傷
眼筋(外側直筋と上斜筋以外の眼球を動かす筋肉)の動きを司る動眼神経の損傷。斜視や複視、対光反射の消失などの症状が現れます。 - 下位脳神経損傷
9番から12番までの脳神経である舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経の損傷。これらの神経は延髄から生じており、損傷が生じている場合は、致死的な脳幹障害が生じていると考えられます。
脳神経の損傷によって視覚や嗅覚などに障害がおきた場合には、後遺障害認定を受けることができます。