中心性頸髄損傷

中心性頸髄損傷とは、頸部(頭部と胴部をつなぐ部分、くび)が急に後ろに反り返ることにより、頸髄の中心部が損傷を受ける症状です。頸椎捻挫(むち打ち)と似ていますが、むち打ちは最高でも後遺障害等級が12級であるのに対し、中心性頸髄損傷が伴うと、9級以上も有り得るため、似て非なる重い傷病です。

1.中心性頸髄損傷を診断するための主なポイント

①画像所見はあるか

むち打ちと症状が似ることから、争いが起こることも少なくありませんが、その一番の証拠となり得るのがMRIなどの画像所見です。

MRIは通常、T1強調画像及びT2強調画像を1セットとして撮影を行います。T1強調とは、主に脂肪組織を白く見せ、水や液性成分などを黒く見せるものです。T2強調とは、脂肪組織だけではなく、水や液性成分なども白く見せるものです。このように、2種類の画像で強調される組織がそれぞれ異なることにより、体内組織の特定をすることが可能になり、また、特にT2強調を用いることで損傷や病変を知ることができます。

このような特徴があることから、中心性頸髄損傷の場合は、T2強調を用いることにより、画像内に「髄内輝度変化(普通と色が違う箇所)」があるかどうかが大きなポイントとなります。中心部に損傷があれば、その箇所で出血が起きたり、髄液が漏れたりしている可能性が非常に高いからです。もちろん、高解像度のMRI機器を用いた方がよいことは言うまでもありません。

②下肢に比べ,上肢の症状が重いかどうか

頸髄には、上肢及び下肢に関わる神経線維が密集していますが、その中でも上肢に症状を発現させる神経がより中心寄りに存在しています。そのため、中心性頸髄損傷の場合、下肢への神経症状と比べ、不釣り合いに上肢の神経症状が重いという特徴があります。

③圧倒的な神経症状が有るかどうか

中心性頸髄損傷とは、その名の通り頸髄の中心部に傷ができてしまうことですので、比較的重い神経症状が発現されます。排泄障害が起こる可能性すら秘める重い受傷ですので、単なる痛みやしびれ程度では中心性頸髄損傷とまでは認められないでしょう。

2.医師の診断において注意すべきこと

中心性頸髄損傷と診断するためのポイントは上に述べた通りですが、画像撮影をせず、被害者の症状の訴えのみを聞いて医師が「中心性頸髄損傷」と診断する場合もありますので注意が必要です。万が一中心性頸髄損傷と診断された場合、画像所見はあったか(MRIの撮影をしたか)、上肢の神経症状の方が顕著かなど、前述のポイントに基づいた検証がなされているかをきちんと確認しましょう。

また、その逆も有り得ます。つまり、むち打ちと症状が似ていることから、画像撮影をせずに「頸椎捻挫」と診断し、後に神経症状が重くなったことから中心性頸髄損傷が疑われるという場合もあるのです。事故当時から一定期間後に診断されてしまうと、交通事故との因果関係が疑われてしまう場合がありますので、症状が重いと感じる時は初期からきちんと医師にその旨を訴えることが重要です。

 
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