高次脳機能障害と後遺障害申請 1

高次脳機能障害について自賠責保険から後遺障害等級の認定を受けるためには,1.事故によって脳に損傷が生じたこと,2. 記憶力や注意力,判断力の低下,日常生活動作にどの程度の介助が必要かなど脳機能に障害が生じていることを自賠責保険に示す必要があります。

今回は,1. 事故によって脳に損傷が生じたことについて解説致します。

1 画像

事故によって脳に損傷が生じたことは,MRIやCT画像から証明します。MRIやCTで脳の損傷がはっきりしないときには,PET(陽電子放出断層撮影)やSPECT(単一光子放射コンピューター撮影法)といった脳内の血流・代謝など細胞の働きを確認できる検査を用い,脳損傷を証明します。

びまん性軸索損傷といって,CTではっきりとした脳挫傷が映らない脳外傷もありますが,その場合でもMRIであれば脳内の小さな出血を捉えることができ,また,事故直後と慢性期の画像を比較して,脳全体の萎縮や脳室の拡大を示すことによって,事故による脳への影響を示すことができます。

MRIによく用いられる「テスラ」というものは,磁力の大きさを表す国際単位です。その強さに応じ,MRI検査機器は0.2~3.0テスラまでが存在し,その数値が大きいほど,短時間で高画質の撮影を行うことが可能です。事故による脳への影響を発見するためには,より高テスラでのMRI検査を行うことが望ましいといえるでしょう。

2 意識障害の存在

また,事故直後に意識障害を起こしていることについても,後遺障害診断書に記載して頂く必要があります。
昏睡から半昏睡で刺激により開眼しない程度の意識状態が6時間以上継続するケースでは,高次脳機能障害が残りやすいとされており,また,健忘症から軽症意識障害が1週間以上続く場合には高次脳機能障害が残り得るともされています。

後遺障害診断書を作成して頂く段階では主治医の先生に事故直後の意識状態を詳しく記載していただくことが必要です。

また,症状固定後も高次脳機能障害が生じていることを証明するために,JCS(ジャバン・コーマ・スケール),GCS(グラスゴー・コーマ・スケール)による意識レベルの調査を行うことも重要です。後遺障害等級12級12号以上の等級を獲得するためには,これらの調査は欠かせません。調査によるレベルが全く付かないと等級認定は難しくなってしまいますが,低レベルであっても,後遺障害等級が認められるケースもあります。

 
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