1.頭部外傷とは
頭蓋内損傷とは、頭蓋骨の内部(脳など)に生じた損傷のことをいいます。
- 脳挫傷
脳本体に生じた損傷(壊死や出血)
(1) 直撃損傷・・・衝撃が加わった部分に生じた損傷です。
(2) 反衝損傷・・・衝撃加わった部分の反対側に生じる損傷です。後頭部に衝撃を受けた際に前頭部に生じることが多くあります。 - 瀰漫性(びまんせい)脳損傷
脳の広範囲に生じた損傷です。 - 急性硬膜下血腫
硬膜の内側の脳に出血が起こり、脳と硬膜の間に血が溜まって固まって脳を圧迫する症状です。CT上、三日月状で広範囲に現れます。脳に重度の損傷が生じ、腫れも酷くなるため、予後は不良で、後遺症が残ることも多くあります。 - 急性硬膜上血腫(急性硬膜外血腫)
硬膜に存在する血管から出血し、血液が固まってできた血腫です。頭蓋骨骨折を伴うことが多くあります。ただし、脳挫傷を併発していなければ予後は良好な場合が多いのです。CT上では凸レンズ状に現れます。 - 慢性硬膜下血腫
事故直後には問題が無くても、3週間から数か月後かけて硬膜下形成される血腫です。中高年の男性やアルコールを飲む人に多く生じます。認知症に類似した症状が見られることもあります。予後は良いが再発が多いのが特徴です。事故直後にCTに異常が無くても、頭痛や歩行障害、認知症類似の症状などの異常が見られる場合は直ちに病院に行くことが必要です。 - 外傷性くも膜下出血
硬膜の下に存在するくも膜と軟膜との間に出血が生じている症状です。 - 広範囲脳腫脹
脳の両側の大脳半球が腫れて、脳室や脳溝、脳槽が圧迫される症状です。 - 乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)
乳幼児が頭部を揺さぶられることにより、脳の血管が切れて硬膜下血腫が生じることをいいます。乳幼児が頭部をゆさぶられるようなことがあれば、注意が必要です。 - 外傷性脳動脈瘤
脳の動脈壁が外部からの衝撃によって瘤状に変化する症状です。動脈瘤は、中壁を欠くために破裂しやすく、くも膜下出血の原因となることがあります。
以上のように交通事故によって頭部外傷が生じた場合、頭蓋内損傷が生じている場合もありえるため、病院で適切な診察を受けることが必要です。
また、事故直後は、問題がないように思えても、慢性硬膜下血腫のように時間が経過してから症状が出る場合もあるので、交通事故後、異変を感じたら、すぐに脳神経外科を受診することが大事になります。
事故直後に意識障害を生じており、上記のような脳の損傷が画像で確認され、認知症のような症状や怒りっぽくなるなどの性格の変化が見られるような場合には、高次脳機能障害として後遺障害認定をうけることができることもあります。