Q①-10

交通事故で被害に遭い、損害賠償を求めて裁判を起こそうとしているのですが、請求原因について、民法709条や710条に基づく請求と、自賠法3条に基づく請求では具体的に何が違うのでしょうか?

A:立証責任者と、請求できる相手に違いがあります。

民法709

故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

民法710

 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

 

交通事故の加害者等が負う基本的な民事責任として、民法上の不法行為責任がありますが、その法的根拠となるのが、上記の条文となります。交通事故も、不法行為の代表的な類型です。

対して、自動車損害賠償保障法(通称:自賠法)3条には、以下のような条文があります。

(自動車損害賠償責任)

第3条 自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。ただし、自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。

 

交通事故で怪我を負った被害者は、民法709条及び710条だけでなく、自賠法3条に基づいた損害賠償請求も可能です。両者の違いは以下の通りです。

①立証責任者

民法709条及び710条に基づく損害賠償請求においては、請求する者(被害者)が様々な立証をしなければいけません。すなわち、交通事故においては、

1.交通事故の発生
2.その交通事故が、加害者の故意または過失に基づくこと
3.被害者に損害が発生していること
4.損害の発生が、交通事故に基づくものであること

の4つを、被害者が証明しなければならないのです。

しかし、自賠法3条においては、「…自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと、被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと並びに自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったことを証明したときは、この限りでない。」とあるように、加害者が立証責任を負っています。すなわち、加害者は、自賠法3条但し書きにあるように、

1.自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかったこと
2.被害者又は運転者以外の第三者に故意又は過失があったこと
3.自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかったこと

が証明できなければ、賠償責任を負うことになります。自賠法3条では、立証責任を加害者に転換することで、被害者救済の観点から、被害者の立証の負担を軽くしているのです。

②請求の相手方

民法709条及び710条においては、細かい事情を考慮しなければ、一般に交通事故の加害者(運転者)に対し損害賠償を請求し得ることとなります。また、例えば加害者が会社の車を使用し業務中に事故を起こした場合には、民法第715条第1項で「ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。」と規定されており、使用者責任として、加害者の雇用主などに損害賠償を請求することが可能です。

一方で、自賠法3条においては、「運行供用者責任」を問うこととなります。第3条の条文冒頭で、「自己のために自動車を運行の用に供する者…」と書かれていますが、2条3項において、「この法律で「保有者」とは、自動車の所有者その他自動車を使用する権利を有する者で、自己のために自動車を運行の用に供するものをいう。」と定められており、「自己のために自動車を運行の用に供する者」には、所有者も含まれることとなります。つまり、自賠法3条に基づくことで、運転者だけでなく、自動車の所有者にも請求が可能となります。なお、前述の民法715条に基づく使用者責任については、加害者が会社の車を使用しての業務中であった場合には、使用者責任と、自動車の所有者としての運行供用者責任との両方を問えることとなります。

③損害の種類

なお、自賠法3条で負う責任については、人身損害のみとなります。車の修理費などの物的損害は、民法709条及び715条に基づいて請求することとなりますので注意が必要です。

 
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