Q②-21

私には第3頸椎の脊柱管狭窄があります。このことが原因で保険会社から「素因減額をする」と言われました。素因減額とは何ですか?脊柱管狭窄があると、必ず減額されなければならないのでしょうか?

A:被害者側の事情によって損害が発生又は拡大した場合に、加害者に損害全部を負担させるのは衡平でないことから、損害額の一定の減額を図る考えです。実際に脊柱管狭窄があれば、素因減額は避けられない場合が多いですが、そもそも脊柱管狭窄なのかどうか、疾患には当たらない程度なのかどうか、医師の詳しい検査による判断が必須です。

素因減額とは、被害者側の過失(落ち度)ではありませんが、被害者側の事情(素因)があるために、損害が発生又は拡大した場合、加害者に損害全部を負担させるのは衡平ではないことから、過失相殺の規定(民法722条2項)を類推適用する考えです。たとえば、被害者が心理的に特異な性質(極めて激しやすい、不安になりやすい等)を有していたところ、事故が原因で益々その特異性が際立ち、それにより治療期間が延びた場合が典型です(心因的素因)。また、事故前から既往症があり、それが事故と相まって症状を発生させた場合、又は症状が重くなった場合も、身体的素因として素因減額の対象となります。ただし、疾患には当たらない個人の身体的な特徴は、特段の事情がない限り、素因減額の対象にはなりません。

そもそも、脊柱管狭窄症という傷病は、交通事故による外傷として発生することは有り得ず、加齢による発現や、既往症による発現がほとんどです。素因減額の対象となり得るかについては、以下の判断基準が参考になるかと思います。

①加齢による発現の場合、加齢に伴う通常の変性の範囲内かどうか

加齢に伴う発現の場合は、それが通常の変性の範囲を超えるのかどうかが問題となります。被害者に脊柱管狭窄症の通院歴がなかったり、事故以前に具体的な症状が出ていなかったりする場合には、疾患と呼べるほどのものとは言えず、素因減額は否定される傾向にあります。

②そもそも脊柱管狭窄症かどうか

脊柱管狭窄症のMRI画像は、変形性頚椎症と呼ばれるものと酷似していると言われます。変形性頚椎症は、負担のかかる頸椎が、加齢とともに徐々に傷んでくる症状で、自然な加齢に伴う変化とされており、裁判上も素因減額の対象とはしないこととしています。そのため、医師の診察において脊柱管狭窄症と診断された場合には、その医学的根拠をきちんと説明してもらうようにしましょう。

その他にも、治療期間が一般的かつ適切な期間内であった場合や、仮に脊柱管狭窄症が無かったとしても後遺障害等級が同程度のものだったと判断できる場合などは、同様に素因減額は否定される可能性がありますので、脊柱管狭窄症があるからといって形式的に素因減額が認められる訳ではありません。上記の①及び②の場合においては、担当医の診断書や意見書・報告書などを作成してもらい、証明することも有用です。

 
Copyright(c) 浜松の弁護士による交通事故法律相談所 All Rights Reserved.