Q②-12:事業所得者の休業損害

Q:事業所得者の休業損害は、どのようなものが認められるのでしょうか?

A:現実の収入の減少があった場合には認められますが、算定方法には注意が必要です。

交通事故に遭い、その怪我の影響や治療のために、仕事を休まざるを得ないということも当然あると思います。個人事業主などの事業所得者の休業損害では、どのようなものが認められるのでしょうか。

赤い本 弁護士必携 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称赤本)には、「現実の収入減があった場合に認められる。なお,自営業者・自由業者などの休業中の固定費(家賃、従業員給料など)の支出は、事業の維持・存続のために必要で、支出がやむを得ないものは損害として認められる。」と書かれています。この文言から、2つの要素について考えてみましょう。

1.現実の収入減があった場合に認められる

主に重要になるのはこちらだと思いますが、休業をしたことによって事業収入が減った場合には、収入減として認められます。しかし、重要なのは、その場合の損害額の算定方法です。大きく分けて2種類の方法があります。

①減収額を直接認定する方法

休業を余儀なくされ、その結果収入がこれだけ減ったのだ」と収入減を直接認定する方法です。
しかしながら、一概にその減収が、全て休業によるものということは非常に難しいところです。なぜなら、事業所得者の場合、季節や月によって売り上げは大きく変動するもので、収入減があったとしてその収入減の原因との因果関係の判断が非常に難しいからです。そのため、この方法を用いようとする場合は、交通事故の受傷及びその治療の影響と、収入減との因果関係をしっかりと結びつけることが重要です。

②基礎収入額(日額)に休業日数を乗ずる方法

①の方法が一概に簡単とは言えないことから、こちらの方法が用いられることもあります。この基礎収入額は、通常は交通事故前の税務署への申告所得額を基に計算されます。どの期間のものを用いるかについては、事故前3ヶ月間の収入の平均を以って基礎収入額を算定するのが一般的ですが、①で述べたように、事業収入は季節や月に応じて大きく変動することも考えられますので、比較的長期期間の比較や、前年の同月付近を比較し基礎収入額を決定する場合も多くあります。

2.休業中の固定費は、事業の維持・存続のために必要やむを得ないもの

減収に対する休業損害とは別に、個人事業に関わる固定費についても、一定の損害を請求できる余地があります。固定費について休業損害として認められるのは、休業期間中に『無駄に』支払ったものになります。固定費と対照的な費用として変動費がありますが、変動費は、原則として休業によって支出を免れるものとして損害には当たりません。しかしながら、固定費か変動費かは、経費の費目ごとに定められている訳ではなく、休業中にも関わらず「無駄に支払ったかどうか」という観点から本質的に考えて判断することが重要でしょう。例えば、地代家賃や業務に関わる保険料などといったものは、休業中か否かを問わず、存続する限り固定で支出が発生いたしますので、無駄に支払ったものとして損害と見なされる可能性が高いでしょう。一方、ガス・水道・電気などの光熱水費は、休業中であれば費用は発生しないものであるとして損害とは見なされませんが、例えば、光熱水費の一部に固定料金があるという場合は、休業中か否かを問わず固定で発生する支出であり、損害として見なされる可能性は高いと言えます。「光熱水費=変動費」という短絡的な思考は誤りであり、その内訳をきちんと確認して、固定費的な概念に当てはまる支出が無いかどうかを分析してみることが重要です。

 
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