Q②-10:遺族の精神的苦痛に基づく慰謝料
交通事故により配偶者を亡くし、精神的苦痛を被りました。慰謝料としてどの程度請求することができますか?
A:被害者(本人)の慰謝料と、被害者の死亡による近親者の精神的苦痛に基づく慰謝料とをある程度一体的に考える必要があります。
被害者が配偶者の場合、「赤い本」基準で2500万円が死亡慰謝料の相場とされます(下記図表参照)。死亡慰謝料は、被害者が交通事故により即死した場合を含めて、被害者本人にその請求権が発生しますが、現実には被害者本人が請求することは不可能ですので、その請求権が相続人に相続されます。もっとも、精神的な苦痛の程度を金銭的に評価することは、現実には困難です。そこで、実務上は図表のとおり一定の基準が採られています。
被害者が一家の支柱である場合 |
2800万円 |
被害者が母親・配偶者である場合 |
2500万円 |
その他の場合 |
2000万円~2500万円 |
ただし、加害者側の悪質性が極めて強い場合(著しい速度超過、酒酔い、無免許、虚偽報告、不合理な弁解等)には、相場以上の請求が可能となることもあります。
なお、被害者の配偶者等が被害者から相続した損害賠償請求権とは別に、精神的苦痛による損害賠償を請求することも可能です(近親者固有の慰謝料請求権:民法711条)。ただし、前記死亡慰謝料の中に近親者固有の慰謝料も含まれると考えれば、2500万円を大きく超える形で、別途近親者の慰謝料を請求することは困難ともいえます。