Q②-11:整骨院等治療の注意点

怪我の治療として、整骨院に通おうと思うのですが、何か問題はあるでしょうか?

A:整形外科等の診察は必ず続けましょう。

交通事故で怪我をした際、整骨院(接骨院)は、病院の次に利用されることが多い機関です。整骨院は夜間対応可能なところも多いため、仕事終わりにリハビリ代わりに利用する方も多いというのが現状です。その際気を付けるべきポイントとしては、主に次の4点があります。

1.事前に医師の指示または同意があったかどうかが争われる

「赤い本 弁護士必携 民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(通称赤本)には、「症状により有効かつ相当な場合、ことに医師の指示がある場合などは認められる傾向にある」と記載があります。加害者側から整骨院(接骨院)での治療について疑義を挟まれていない場合は、加害者側任意保険会社が一括対応をしてくれることもありますが、ほとんどのケースで、赤本記載の通り医師の指示や同意を問われます。

 しかし、交通事故での怪我の治療において、整形外科などの病院と整骨院(接骨院)はある意味で商売敵でもありますので、医師からの整骨院(接骨院)に通うような指示はほとんどないと思った方がよいでしょう(中には、整骨院(接骨院)で施術を受けることを一切認めない医師もいます)。ですからこのような場合、予め医師からの「同意」を取り付けた上で、同意書をもらうことが重要です。当事務所としましても、依頼者の皆様に寄り添いながら、整骨院(接骨院)での施術の必要性を感じる時は、積極的に医師に同意の取り付けを行っています。

2.被害者請求(後遺障害請求)の際、不利になる可能性がある

 一定期間の治療後、症状固定となり被害者請求を行うようなケースでは、医師に後遺障害診断書を作成してもらわなければなりませんが、この後遺障害診断書は整骨院(接骨院)では作成ができません。そのため、作成のためには、医師の診察を受ける必要がありますが、例えば最初だけ病院で診察し、その後はずっと整骨院でリハビリを行っていたという場合、治療の経過が不明だとして医師に後遺障害診断書の作成を断られることがあります。また、整骨院(接骨院)メインのリハビリだと、その後の被害者請求時に後遺障害等級が認められにくいという現状もあります。このように、整骨院(接骨院)メインのリハビリは、病院でのリハビリに比べて不利な場合があるのです。ですから、整骨院(接骨院)治療の利便性などのメリットと、先に述べたデメリットとを比べることが重要です。なお、整骨院(接骨院)治療をメインとする場合でも、先に述べた後遺障害診断書の作成を見据え、最低でも月に1回は病院への通院も継続する方がよいでしょう。

3.受傷名が骨折の場合の通院について

 そもそも、接骨院や整骨院で施術を行う人は柔道整復師と呼ばれ、医師とは厳格に区別されています。柔道整復師の業務範囲は柔道整復師法(以下法といいます)で定められていますが、法17条では「医師の同意を得た場合のほか、脱臼又は骨折の患部に施術をしてはならない。 ただし、応急手当をする場合は、この限りでない。」と規定があり、柔道整復師は、脱臼又は骨折部位に施術をすることは原則としてできません。ただし、骨折部位をかばうことにより、別の部位に疲労がたまったり、患部が凝り固まることにより該当部位をほぐしたりする必要がある場合もあります。そのため、施術を受けたい場合には、医師にその必要性を理解してもらい、同じく同意書をもらっておくことで、その後の争いを避けることができるでしょう。

4.病院と整骨院とで症状を訴える部位を変えない

 病院の診察では訴えていない症状や部位を整骨院(接骨院)で訴えて施術を受けると、治療の関連性が認められない場合もあります。そうならないためにも、病院での診察の際、痛みを感じる部位などはきちんと訴えるようにしましょう。

 
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