交通事故に遭ってしまったら?-事故発生直後の対応-
交通事故の経験は一生に何回もあるわけではない
交通事故は、恐らく殆どの方が一生の間に多くて数回、もしくは一度も経験しないことでしょう。そのため、いざ交通事故に遭われた時に気が動転してしまい、確認すべき事項を確認せず、また、知識がない結果不利な行為をしてしまうということは往々にしてあります。
被害者が適正な補償を受けるためには、自身に発生している損害をきちんと明らかにしたり、現場で起こったことをきちんと記録したりするなど、積極的な行動が必要です。「(自分の方が被害者だから)相手から賠償してもらえる」と思っていると、後に思わぬ損をしてしまう場合があります。
このページでは、不運にも交通事故に遭ってしまった際、ぜひ行っていただきたい対応について説明させていただきます。
1.警察に通報 (重要!)
2.加害者の情報の確認
3.目撃者の確保
4.保険会社に連絡
5.病院に行く (重要!)
6.「人身事故」として処理
1.警察に通報(重要!)
交通事故に遭われてしまったら、まずは警察に通報しましょう。小さな事故や怪我がないようないわゆる物損事故でも同じです。また、駐車場内の事故などでも、警察に来てもらうことは可能です。
被害者自身も気が動転してパニックになるかもしれませんが、それは加害者にとっても同じ場合があります。落ち着いて冷静な対応を心掛けていただきたいと思います。
なぜ警察への通報が大切なのか?ー実況見分や交通事故証明書の作成ー
警察が通報を受けて現場に到着すると、事故の状況を記録してくれます(実況見分)。当事者情報・事故の概況などが記録されることで、対外的に事故の内容を証明するものになり、交通事故証明書という書類で発行が可能となります。
警察に通報しない限り、交通事故証明書は発行されません。交通事故証明書は、後に加害者側の任意保険会社や自賠責保険会社に保険金や賠償金を請求する際絶対に必要となるもので、それがないと保険金や賠償金が支払われない可能性もあります。
被害者としての権利や利益を守るために、どんなに小さな事故であっても警察への通報を怠らないようにしてください。
実況見分には必ず立ち会うようにしましょう!
警察が事故状況を記録する実況見分では、以下のようなことが現場で確認されます。
- 事故が発生した地点はどこなのか
- 最初にお互いの車両等を発見した場所はどこなのか
- ブレーキを踏み始めたのはどこなのか
これらは、被害者と加害者双方の言い分をもとに、警察官が後に作図した”実況見分調書”に記載されます。実況見分調書は、後の示談交渉や裁判手続きにおいて、とても重要な証拠として取り扱われますので、実況見分には必ず立ち会い、被害者として見たままの状況をきちんと警察官に伝えるようにしてください。
なお、被害者が怪我を負って救急搬送された場合など、直後の実況見分の実施が難しい場合には、後日に行われる場合もあります。「救急搬送されて現場から去ってしまうから立ち会えない」ということはありませんので、ご安心ください。
2.加害者の情報の確認
こちらについては、加害者が事故現場に残って実況見分等が行われた場合、警察が聞き取ってくれるため、必須という訳ではありませんが、警察に通報し、現場に到着するまでの間に行っておくことをお勧めします。
記録すべき事項としては、
- 氏名
- 住所
- 連絡先(電話番号)
- 車のナンバー、車種、車体の色や特徴
- 加入している自賠責保険、任意保険会社名
などです。
特に、車検証には車両の所有者の情報も記載されています。人身事故の場合には、法律によって運転手だけではなく車両の所有者にも請求することが可能です。また、加害者が勤務中であった場合、雇用主に請求することも可能です。これらの情報は交通事故証明書には記載されませんので、確認する意義があります。
また、場合によっては、加害者が警察の到着前に逃走してしまうケース(いわゆるひき逃げ)も考えられます。その場合、加害者と接触できた段階である程度の情報を聞き出しておいたり、あるいは車のナンバー等を記録しておく方が望ましいといえます。
3.目撃者の確保
交通事故の状況によっては、事故状況が大きな争点となるかもしれません。その場合、第三者の目撃情報が非常に有用となる可能性があります。目撃者が分かった場合には、その方の氏名・住所・連絡先などを聞いておくとよいでしょう。
4.保険会社に連絡
交通事故発生時には、被害者と加害者それぞれが、自分の任意保険会社に連絡するのが通常です。そのため、被害者加害者問わず、自分が交通事故の当事者となってしまった時の為に、自分の任意保険のサポートセンターの番号などを控えておくとよいでしょう。
通常、任意保険の対人賠償保険や対物賠償保険には示談代行サービス※が含まれていることが多く、保険会社に連絡をすることで、加害者もしくは加害者側の任意保険会社との交渉を全て任せることができます。自分自身で加害者側と様々なやり取りを行ったり、賠償に関する交渉を行うというのは心身共に大きな負担となるケースが多いため、積極的に利用するとよいでしょう。
※示談代行サービスの注意点
示談代行サービスは、被害者自身にも一定の過失がある場合に利用可能なサービスであり、追突事故の場合など被害者が無過失であることがおおよそ濃厚である場合、利用ができません。被害者が無過失である場合の交渉などを任せたいという場合には、弁護士等専門家への依頼をご検討ください。
なお、自分の任意保険に付いている特約などによっては、損害の補償が迅速に行われ、被害者自身にとって大きなメリットを受けられる場合があります。交通事故に関する補償内容は日常的に細かく覚えられているものではない場合が多いと思いますので、保険会社への示談代行サービスと併せ確認するとよいでしょう。
5.病院へ行く(重要!)
事故によって怪我を負った場合には、早めに病院に通うことが大切です。特に、交通事故の受傷で大きな割合を占めるむち打ち症状は、事故直後にはあまり痛みを感じないものの、時間が経ってから症状が強く現れるというケースが良くあります。違和感が少しでも感じるような場合には、ためらわず通院しましょう。
事故か発生から期間が空いて通院したようなケースでは、加害者側が交通事故と怪我の因果関係を否定してくる可能性もあります。被害者自身が適正な補償を受けるために、すぐに病院に行くことはとても重要なことです。
診察時には自分が感じている症状を具体的に伝えること
病院で診察を受けたり、治療を受けたりした場合、その内容は必ず病院のカルテ・診療録・保険会社に提出される診断書等に記載されます。特に、病院のカルテや診療録は、診断書に比べて患者である被害者の訴える症状などが詳細に記録される傾向にあります。
カルテや診療録の記録によって、
- 被害者が受傷初期にどのような症状を訴えていたか
- 治療によってどのような効果があるか
- 痛みなどを一貫して訴えているか
などを読み取ることができ、そういった情報は、被害者にとって有利になる場合が多いです。特に、整形外科的な症状は、受傷直後が最も酷く、その後の時の経過や治療によって少しずつ回復していくという傾向にあります。なので、初診時には、自分が感じている症状や違和感は漏れなく伝えるようにしましょう。「初診時には訴えていない症状が後から発現した」と読み取れる場合、事故との因果関係を否定されてしまう可能性があります。
加害者側の保険会社に通院する病院を伝えること
加害者側に任意保険がついていれば、治療費は基本的に加害者側の保険会社が支払ってくれます。保険会社から病院へのスムーズな支払いがなされるためにも、どこの病院に通うのかを予め伝えておきましょう。
6.「人身事故」として処理
交通事故で怪我を負った場合には、人身事故として処理してもらうことが重要です。
交通事故というのは、一般的に「人身事故」と「物損事故」に分けられ、これらは警察によって処理されます。
- 人身事故…交通事故によって人の生命や身体に損害を発生させたもの
- 物損事故…生命や身体への被害はなく、自動車や標識など物にのみ損害を発生させたもの
見ての通り、事故の当事者の生命や身体に損害(死亡、怪我など)が発生しているか否かで分かれることになります。
被害者が怪我を負っているにも関わらず物損事故として処理されることは、被害者にとって大きなリスクを伴います。
受傷を疑われかねない
上記の①の例のように、事故発生直後は身体への異変をほとんど感じないために物損事故として処理したものの、後に身体に具体的な症状が現れ、怪我を負っていることが分かったというケースがよくあります。その場合に物損事故として処理されたままになっていると、対外的には”怪我はない”もしくは”大したことない”と捉えられかねません。
特に、加害者側の自賠責保険との関係では、保険金の請求に際し交通事故証明書が物損事故になっていると、人身事故証明書入手不能理由書の作成を求めてきたり、最終的には保険金の支払を認めないという結論になる可能性もあったりします。
実況見分調書が作成されない
先の説明で、「警察に通報すると、警察が実況見分を行ってくれる」と説明しましたが、実況見分が行われるのは人身事故の場合のみで、物損事故の場合には簡易的な報告書しか作成されず、なおかつ対外的には非公開となるケースが非常に多いです。そのため、事故の過失割合が争点となったり受傷が疑われたりしている場合に、事故の詳細を客観的に示すものがないと、適切な交渉を行うことが難しくなってしまいます。
物損事故で処理することによる加害者側のメリット
交通事故によって怪我をさせた場合、加害者は刑事処分や行政処分を受ける可能性があります。
- 刑事処分…罰金や禁固
- 行政処分…運転免許の違反点数付加や取消し
一方で、物損事故の場合、これらの処分を受けない可能性があります。
特に、加害者の職業柄車両の運転を行っている場合、仕事への支障がある可能性もあるため、物損事故のまま処理したいと頼んでくる場合があるのです。
加害者側の説明を鵜呑みにするのは危険
上記のように加害者側がメリットを受けようとして懇願するにあたり、「物損事故として処理してくれたら、そっちの過失は0で処理してもいい」とか、はたまた加害者側の保険会社が「物損事故のままでも治療費の支払いはできるから問題ない」と言ってくる場合もあります。
ですが、これらは所詮口約束でしかありません。加害者自身が上記のように言ってきたとしても、後に保険会社が介入した際に「そのようなことは聞いていない」と言ってくる可能性もあります。また、物損事故のままでも治療費の支払いが行える場合は確かにありますが、後に人的損害の補償額で争うことになった際、物損事故のままで処理されていることは、どうしても受傷が軽微であることの担保になりやすくなってしまいます。
人身事故への切り替えは簡単!
総じて、物損事故のままで処理されることは、被害者にとって大きな大きなリスクとなります。ですから、現に怪我を負っている場合には、可能な限り物損事故から人身事故への切り替えを行っていただきたいものです。
切り替え方法は、
- 病院で診察を受け、診断書を発行してもらう
- 所轄の警察署に人身事故へ切り替えたい旨説明し、手続きした上で診断書を提出する
だけです。なお、切り替えに期限はありませんが、事故発生から期間が空けば空くほど、警察側が切り替えを拒否する可能性が高くなってしまいますので、早めに行いましょう。
先に説明した「病院に行く」ことと、「人身事故として処理すること」はセットで行ってください!
事故直後からのサポートが可能です!
以上のように、交通事故被害にあった際、後に適切な賠償を得られるようにするためには、直後から適切な行動が求められます。ですが、それでも大半の方にとっては、「何をすればいいか分からない」場合が多いと思いますし、実際、現場では気が動転してしまったり、負った怪我の影響で十分な対応ができなかったりということもあると思います。
ですが、直後からの適切な対応が、被害者自身の利益や権利を守ることは確かです。
「事故に遭ってしまって、これからの流れも分からず不安…」という方、ぜひ岡島法律事務所にご相談下さい。交通事故の専門家による初期からのサポートがあれば、更に将来の損害賠償にかかる交渉を有利にスムーズに進めることができます!