Q①-5:他の解決手段は?
示談交渉、ADR以外に当事者の合意に基づく解決方法はありますか?また、その特徴を教えてください。
A:調停(交通調停事件)があります。
交通事故事案のうち「自動車の運行によって人の生命または身体が害された場合における損害賠償の紛争に関する事件」を交通調停事件といいます(民事調停法33条の2)。物損のみの事案は、一般民事調停事件の対象となります。一般民事調停事件の管轄は、相手方の住所、居所、営業所若しくは事務所の所在地を管轄する簡易裁判所又は当事者が合意で定めた地方裁判所若しくは簡易裁判所であり(同法3条)、交通調停事件の場合は、これに加え、損害賠償を請求する者の住所又は居所の所在地を管轄する簡易裁判所が加わります。
調停期日では、裁判官と民間から選出された2名の調停委員で構成される調停委員会が、当事者双方の主張を交互に聴取し、証拠調べ等を行い、事案に即した解決を図ります。
メリットとしては、
①費用が安い(裁判所に納める手数料は、トラブルの対象の額に応じて決まりますが、訴訟に比べて少なく済みます)
②円満な解決を目指せる(「判決」という形で白黒ハッキリさせるのではなく、両当事者の合意を尊重します)
③プライバシーが保護される(民事調停は非公開です)
④早期解決につながる(ポイントを絞って話合いを進めるため、訴訟に比べて短期間で終わります)
⑤判決と同一の効力を有する(当事者の合意内容は「調停調書」にまとめられ、調書の内容が履行されないときは、強制執行の申立てができます)
が挙げられます。
ただし、調停はあくまで当事者間の合意に基づくものである以上、合意に至らなかった場合には、訴訟を提起せざるを得ません。また、一方の当事者が一方的に有利・不利になることを避けるため、妥協を迫られるリスクも考慮しなければなりません。