Q②-13:家事従事者の休業損害
仕事をしておらず、家事を行ういわゆる家事従事者が交通事故に遭い、怪我の痛みや治療のために、ほとんど家事ができていないような場合にも、特別な損害の請求はできないのでしょうか?
A:家事従事者として、休業損害を請求することが可能です。
家族のために家事をしている家事従事者については、家事労働を評価し、現金収入がなくとも休業損害を請求することができます(家事従事者休損)。「誰かしらのために」家事をすることで、他人の財産上の利益を生み出している(例えば、妻が家事を行うことで、夫は安心して仕事に専念できるというような場合)と評価される場合に損害が認められるため、1人暮らしの場合には、「家事従事者」としての休業損害は発生しません。しかし、1人暮らしの場合に、家事ができなくなることにより家政婦などに家事を依頼する場合は、その費用を損害として請求できる可能性があります。
1.算出のベース
家事従事者休損のベースとなる収入額(基礎収入)ですが、厚生労働省が毎年実施する「賃金構造基本統計調査」により結果に基づいた平均収入(賃金センサス)を用います。通常は、性別ごとの全年齢平均賃金を用いることが多いですが、高齢家事従事者の場合には、現実の収入額について、全年齢との乖離があることから、対象の年齢別平均賃金を利用して計算する場合があります。
2.算出方法
以下の2通りがあります。
①逓減法
怪我や、通院及び治療による家事労働への支障割合をパーセンテージで表す方法です。例えば、受傷初期に、強い痛みが伴い全く家事ができなかった場合は支障割合100%、少しずつ快方に向かっているものの、半分程度家事が行えていないと感じる場合には50%、治るにつれて結構できるようになれば25%、というように表し、前述の基礎収入をもとにした日額に、そのパーセンテージを掛け合わせることで損害額を算出します。
②通院日ベース計算
治療のために通院した日は家事が全くできなかった(家事を休業した)とみなし、日額と通院日を掛け合わせて休業損害を算出する方法です。
家事従事者休損というものが、現実収入が無くとも家事労働を評価して現金化するという考え方ですから、フィクションの議論と言えます。特に、上記の逓減法の計算は、現実離れしない程度にパーセンテージを操作することもできるので、柔軟な考えが肝要です。ただし、後遺障害等級第14級9号の労働能力喪失率が5%ですので、例えば、症状固定後において、逓減法にもとづくパーセンテージを5%より大きく設定するような場合は、認められない可能性が高いと思った方がよいでしょう。