40代男性 過去の事故で後遺障害の認定があったが、同部位について後遺障害の認定を踏まえた和解金を獲得
事故状況
信号のない交差点を走行中、右方から相手方車両が交差点に進入し衝突。相手方車両側に一時停止の標識あり。相手方車両は、ご依頼者様進行方向の対向車両に隠れるように交差点に進入してきた。
争点
後遺障害等級、慰謝料、逸失利益、過失割合
事務所の活動
被害者請求、交渉、訴訟
解決のポイント
本件のご依頼者様は、数年前にも交通事故に遭い、その際の後遺障害申請で頚部の神経症状に後遺障害等級第14級9号が認定されていたものの、今回の交通事故でほぼ同部位を痛めてしまいました。およそ半年の治療を経ても痛みが残存していたため、後遺障害申請を行いましたが、認定機関は、「過去に同部位に後遺障害が認定されており、今回の症状はそれを超えるものではない」として、後遺障害を否定しました。
このような結果は、自賠責の運用や認定基準上ある程度仕方がないものでしたが、前回事故からの期間や、本件事故までのご本人の容態的にも、前回事故の後遺障害が現在まで残存しているとはおよそ認めがたいとして、後遺障害が認定されるべきか否かを訴訟に委ねることとしました。
本件の最大の焦点は、「過去の事故で頚部に後遺障害を負った人物が、数年後に別の事故で頚部に障害を負った場合に、改めて後遺障害が認定され得るかどうか」というところでした。
まず、自賠責保険の後遺障害申請で認定された後遺障害は、本来「半永久的に残存するもの」と解されます。例えば、交通事故の怪我の影響で手や足が欠損したり、一生消えない大きな傷が残ったり、麻痺が残存したり…というものはその程度からも半永久的であることが分かりやすいかと思いますが、いわゆる第14級9号は、端的に言うと「医師の所見のない神経症状」の残存になります。「医師の所見のない」とは、「痛みが生じる原因が画像などから説明できない」ということであり、医師からすると、「神経などの異常は見受けられないものの、患者本人は痛いと言っている」というような見解となります。ただ、言い方はあまり好ましくありませんが、後遺障害の観点からは、「単なる痛みが半永久的に続くとは考えられにくい」という見解が一般的となっていることから、実務上は、日常生活への影響(後遺障害逸失利益)が数年程度(基本は5年)に制限されるような取り扱いが基本となっています。
つまりは、過去の事故で後遺障害等級第14級9号が認定されている場合でも、事案によっては同部位の後遺障害が認定され得る可能性があります。その条件として重点的に考えた事情は大きく3点ありました。
- 現在抱える後遺症が第14級9号相当であるかどうか
⇒この点は条件というよりは大前提です。 - 前回事故における症状固定日から相当年数が経過しているかどうか
⇒実務上、14級9号の後遺障害逸失利益が5年に制限されることから、少なくとも前回事故から5年以上が経過していなければ、前回事故の後遺障害の影響を完全に否定できません。また、前回事故から5年以上経過している場合は、実質的に後遺障害逸失利益の補償を受けていないことになるので、損害の主張において、より有利になるといえます。 - 前回認定された後遺障害の影響が無いと客観的に説明できるかどうか
⇒上記「2」とも若干被りますが、前回事故の後遺障害の影響が残っていたとしたら、後遺障害の存在は否定されるか、認定されたとしても損害は割合的に減額されてしまうことになります。本件においては、
・前回事故の症状固定後もご本人は自費で通院を続けていたが、その通院も途中で終了し、以降本件事故まで後遺障害に関わる通院歴は無かった(ご本人の健康保険の使用履歴で証明)。
・前回事故の症状固定後から本件事故発生までの間、後遺障害の影響を思わせる仕事の休業等は一切無かった(ご本人の該当期間の出勤簿を取り寄せ)。
という点から、本件事故における前回事故の後遺障害の影響は一切ないという主張を行いました。
本件は最終的に裁判上の和解で終局しましたが、和解の内容には14級9号の内容が一定程度盛り込まれ、裁判所が実質的に再度の後遺障害を認定する判断をしてくれました。自賠責のルールや認定基準に抗い訴訟提起しましたが、そこまで行い結果としてご本人の受取額を増額させることができたので、非常に意義のある結果を導くことができました。